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  お釈迦の資本主義
内橋克人「90年代不況の帰結」岩波書店を読んだ。少し古いが(1999年)、絶版になっている本を読むには図書館が実に便利なので暇だからよく出かける。中野の中央図書館の蔵書は60万冊あるというから棚にないものでも奥の倉庫からリクエストすると出て来るのだ。良い本は大抵売れないからすぐに絶版となって新刊書店には置いてない。かといって自分で買うのも限界があるから、そういう時は図書館の利用は実に便利だと思う。
 世界的な需要不足=不況というのは実に久しぶりだろうが、冷戦終了後の不況として大規模な需要不足が構造的に起きたのは90年代の日本が始めての例だと思う。通常の在庫循環的な不況ではなく、産業構造が根本的にイカレてしまったという例として、日本を始め、イタリー、アメリカ、イギリスなどの工業の衰退を扱ったものとして実に参考になる。
結局は、冷戦終結による共産圏が資本主義先進国の経済圏に統合されて世界規模で産業の再編が起きた結果であるから、循環的な部分だけ回復しても需要不足は改善しない。これは需要の不足というよりは生産の過大が要因だから、不稼働の生産設備の世界規模の廃棄が実現しないかぎり根本的な解決法がないのであり、それは日本だけでどうなるものではない。しかも新興国の中国、インド、アジア、南米、中東などは今後も大規模な設備拡大を進めて行くわけだから、生産過剰、製品価格の下落、原材料価格の上昇が常態化するのは必然で、製造の利幅はますます不利になっていく。つまり日本の「物造り」に明日は無いという事で、とっくにアメリカやイギリスは諦めてしまっている。今度は日本が諦める順番というのが歴史的な必然なのだが、それに変わる産業がないから諦め切れないで困っているのが実情だろう。それでも企業は国境を越えて最新工場と設備を新興国で造って輸出するという方法で生き残ることを考え実行している。その分の雇用が国内で蒸発し、工場の無くなった分の土地が余り、その分のGDPが下がり賃金と物価と地価と株価と税収が下がるというなんでも下がるというデフレーションになっているわけで、解決策は戦争ぐらいしかないのだろうが、戦前と違って平和憲法だからそれも当面はこちらから行動を起こすとうのは無理であるから、八方塞がりの状態になっているといえる。
日銀もこれといった明確な解決策はないと匙を投げているし、平和的に設備と人員と負債を廃棄するのには弱い物が潰れるという現象を待つしか無い。つまりJALのように不要になった会社や産業が破綻して無くなることで需給のバランスが自然に戻るまで待つ以外に方法が無いわけである。それを世界的に景気浮揚のための政府による財政支援でなんとかしようとすれば、死ぬまでの時間を少し伸ばすことが出来るかもしれないが、資金には限度があるから今度はギリシャやスペイン、アイスランドのように国家が破綻するリスクが起きるということになる。1929年の大恐慌でも結局は需給がバランスしたのは第二次大戦で日本や欧州の生産設備が破壊されて生産規模が劇的に縮小したせいで、残ったアメリカの産業が一人勝ちになって回復したということになったが、今回はどこも設備が物理的に破壊されたわけでないので需給の改善は起こらない。そればかりかコスト高で廃業破綻したドイツの製鉄設備を中国の鉄鋼メーカーが買って中国に移設して安い鉄をその除却した低コストの設備でどんどん造って安値で輸出するというのが常態化しているのだから、ますます需給ギャップは世界規模で拡大する。中国は政治的には開発独裁だから、市場による淘汰が起きにくい。JALが古いジャンボジェットを売りに出せば中国の航空会社が叩いて多分買うだろう。そうして除却した安い機体と安い人件費で飛ばせば、成田=北京は9800円ぐらいになるんだろう。機内食がカップ麺でも安ければ乗る人は増えるだろう。それに日本のサービスが勝てるとも思えないのだ。ユニクロが売れている理由を中国人は知っているのだから、どんな産業でも同じことをしてくるに決まってらあと思うのだ。
競争国の競争相手がクタバルまで国家与信を利用して安値でシェアを獲得するという戦略を取っている。だから当然、日本の私企業がコスト面で勝てるわけがないのは最初からわかっているのだ。
 これに対抗するのは保護主義以外に方法はないのだが、それをする勇気は日本政府には無いだろう。逆にアジア経済圏の構想が主体となっている。EUのアジア版というモデルだろうがそう容易に実現するとは思えない。関税協定がEUの原点だがそうしたものはアジアには全くないからだ。共同体意識というよりはむしろ中国は反日教育に忙しいぐらいなのである。それよりもドルと円を合体させてジャメリカとして52番目の州にでもなったほうがまだマシな気もするのである。
ドル円が固定なら手先の細かい日本企業と軍事力とドルを使用したジャメリカ工業の世界支配もかなりの割合で可能だろう。
結局は国家単位の資本主義は構造的にお陀仏になったと言って良いだろうと個人的には思う。さてそうなった場合の価格はどうなるのだろうと言うのが命題で、その答えは恐らく90年代の日本株の値動きに現れているのではないか?保ち合って中段を形成して、結局は下に抜けて行くというのがそれだった。
バブルが弾けると高値の3分の一にまず下がるというのが90年代の日本株の指数だった。中国上海株指数の動きに注目している。同様な動きになると思われる。
23:35, Thursday, Feb 11, 2010 ¦ 固定リンク ¦ 携帯

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